メイクをあきらめていた女
プチプラコスメを使うと吹き出物ができ、市販のリップクリームを使うと唇が荒れ、ヘルペスができることもある。
そうなると使えるコスメが限られ、唇には皮膚科処方のワセリンを塗るしかなくなる。
美容垢やコスメ垢、美容系YouTuberの人たちが紹介するコスメを使ってみたいと思っても、「肌が荒れるのでは…」と不安になり、羨望の眼差しで見るだけになってしまう。
私も色々なコスメにチャレンジしてみたい。
顔に色を乗せてみたい。
いつのまにかその思いは嫉妬という感情になり、メイクを楽しんでいる人たちを見るのが嫌になってしまった。
毎日単調なメイクをし、明るい色を顔に乗せている人たちに嫉妬をし、私は段々と自分が何のためにメイクするのかわからなくなっていた。
そんな時に出会ったのが、劇団雌猫『だから私はメイクする』だ。
私には縁遠いテーマの本だと書店で見かけた時に思った。
でも表紙の可愛さから思わず手に取り、パラパラとめくっていくと、そこにはメイクに対して向き合っている女性たちの姿があった。
「アイドルにモテるために化粧する女」、「会社では擬態する女」、「痩せたくてしかたがない女」などなど。
気がついたらその本をレジに持って行っていた。
家に帰って読んで、衝撃を受けた。みんなそれぞれメイクに向き合う姿や過程、理由が違うのだ。
自分のためにメイクする人もいれば、誰かのためにメイクする人もいる。
そしてみなに共通しているのが、「メイクを楽しんでいる」ということだ。
私はメイクを社会人としての義務としてやっていた。
肌荒れを気にしていつも同じコスメを使い、他のコスメにチャレンジするということすらしていなかった。
私は「メイクをすることをあきらめていた女」になっていた。
確かに肌荒れのリスクは怖い。
でも、例えば今使って自分に合っているコスメのブランドのアイシャドウや口紅を試しに使ってみるとか、やろうと思えばできるのだ。
というかむしろやってみたい。
顔に色を乗せてラメも塗って、メイクすることを楽しみたい。
そして今、私の手元にはアイシャドウと口紅がある。
今のところ肌荒れしていないファンデーションと同じブランドの物だ。
アイシャドウをまぶたに乗せた瞬間、キラキラとラメが輝いていた。
ああ、私も色を乗せることができるんだ。
私はなんだか嬉しくなって、何度も鏡で自分のまぶたをチェックした。
肌が荒れることはなかった。
残念ながら口紅は合わなかったが、チャレンジできたことがすごく嬉しかった。
コスメって、メイクって楽しんでいいんだ。
その考えはなんだか私を自由にしてくれた。
これからどういうメイクをしていくのか、まだまだ模索中だけど、どんな時も「メイクを楽しむ」ことを核にしていれば、大丈夫な気がする。
本の帯には「おしゃれ、好きですか?」と書いてある。
今の私なら声を大にして言える。
「おしゃれ大好きです」
- 作者: 劇団雌猫
- 出版社/メーカー: 柏書房
- 発売日: 2018/10/24
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