米原万里『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』
米原万里『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』は、プラハのソビエト学校で共に少女時代を過ごした3人の友を著者が訪ねるノンフィクションだ。
「リッツァの夢見た青空」
勉強はできないけれど、性の知識と男の見極め方を教えてくれるギリシア人のリッツァ。
見たことのないギリシャの青空をうっとりと語り、いつかギリシャに行くことを夢見る。
お金持ちでちょっと嘘つきなルーマニア人のアーニャ。でも誰もが彼女を愛さずにはいられない。
「白い都のヤスミンカ」
クラス一の優等生で、絵を描くことが大好きなユーゴスラビア人のヤスミンカ。
クールでとっつきにくい性格だと思っていたが、心を許した相手には人懐っこい。
3人ともどこにでもいる女の子。
生まれた国も、家庭環境も、ソビエト学校に来た理由もそれぞれ違うけど、確かにそこにいた著者の大切な友人たちだ。
様々な事情で音信が途絶えてしまい、著者が彼女たちに再会するのは30年後。
はたして、時代に、国に翻弄された彼女たちはどこで何をしているのか。
著者がたどり着くのは、想像をはるかに超える「真実」だった。
少女時代の回想はクスクス笑えるところが多い。
学校の様子、クラスメイト、先生たち、家族。
それが大人になった後は目を背けたくなる描写が多い。
激動の東欧は国はもちろん、人々の人生さえも変えてしまった。
その変化は苦いことが多い。
みんなただ幸せになりたかっただけなのだ。
ただそれだけ。誰もが願うことだ。
読んでいて段々と苦しくなってくるが、それでもこの本を読んでよかったと心から思う。
米原万里はロシア語会議通訳者を経てエッセイストになった。
まだ読んでない本があるから読むのか楽しみ。
小説『オリガ・モリソヴナの反語法』も傑作なので、ぜひ読んでもらいたい。