うらやましいぞ『ランチ酒』
原田ひ香『ランチ酒』を読んだ感想。
以下ネタバレあり。
同級生の経営する「中野お助け本舗」で働く犬森祥子は、昼間からお酒が飲める店を探して街をさまよう。
犬森祥子には、ランチの店を選ぶ、明確な基準がある。
酒に合うか合わぬかだ。
なぜなら彼女は、夜から朝まで「見守る」仕事をしているからだ。
「見守る」に含まれるのは、夜の仕事をしている母親の代わりに子どもを見たり、妻に先立たれた男が自殺しないよう見張ったり、15歳の老犬だったり、様々だ。
その一つ一つにそれぞれの生活があり、祥子は適度な距離を取りながら彼らに関わっていく。
祥子自身はバツイチで、娘がいる。
その娘に会えるのは月に1度だけ。
仕事をしていると、時にはそのプライベートな部分を思い出したり、「見守る」相手に話したりすることがある。
そうすることで、友人たちにも話せなかったことを話せたり、自分自身に向き合ったりする。
この本にはたくさんの店が出てくる。
そのどの店でも昼間からお酒が飲める。
ワイン、日本酒、ビール。
一緒に食べるのは、ラムチーズバーガー、焼き魚定食、とんかつ茶漬けなどなど。
読んでいるこちらの食欲を刺激してくる。
なんとも贅沢で、うらやましくなる。
仕事もプライベートもうまくいかない時がある。
将来に不安を感じることもある。
それでも祥子は仕事が終わると「ランチ酒」ができる店を探すのだ。
祥子がこれからどんな選択をしていくのか、できれば続きが知りたい。
そして、また美味しいものとお酒を合わせる彼女を見てみたい。
ドラマ化してもおもしろそうな作品だ。
色々あるけれど、やっぱり思う。
うらやましいぞ『ランチ酒』。