「不安」は置いていこう
雁須磨子『かよちゃんの荷物』の主人公、かよちゃんのかばんはいつも大きい。
友人のひとみちゃん曰く、
「・・・なによこれかよちゃん。岩でも入ってんの?」
そのくらいかよちゃんの荷物は重い。
かばんの中には手帳、携帯、化粧ポーチなど誰でもかばんに入れているものから、万華鏡、ヘアバンド、ストッキングなど「今」必要のないものばかりが入っている。
かよちゃんはないならないで困らないけど、何かあった時のためにと色々入れた結果、荷物が重くなってしまっている。
この何かあった時のため、というのはわからなくもない。
かく言う私もかつて荷物が多かった。
それ「今」必要じゃないよね、と言う荷物でかばんがパンパンだった。
本が2冊以上入っていたり、化粧直ししないのにポーチが丸ごと入っていたり、使わないのに扇子やらカイロやらが入っていたり。
常に持つのは大きいバッグ。クラッチバッグなんて夢のまた夢状態だった。
しかし、今の私のかばんの中には、鍵、財布、携帯、鏡、リップ、ハンカチ、ティッシュ、本1冊。これだけで事足りる。
あんなに荷物が多かったのはなぜなのか。
それは「不安」から来ているのではないだろうか。
もしかすると必要になるかもしれない、これがなかったら困るかもしれないという「不安」だ。
かよちゃんの言う通り、ないならないで困らないのに、あった方がいいと思い込んでしまう。
ないならないでどうにかなると気づいたのは、皮肉にも肩こりがひどくなったからだ。
荷物が重すぎて、肩が痛い。
そこで、必要最低限の物だけをかばんに詰めて外に出てみた。
結果、全く困らなかった。
あればもちろんいいかもしれないけど、絶対に必要というわけではない荷物を減らしたかばんは軽く感じた。
以来、私は必要最低限の物だけをかばんに入れて行動している。
困ったら、その時考えればいいのだ。
肩こりが良くなったかはわからないけど、荷物が軽いと体まで軽く感じる。
私はなんとか「不安」を置いていくことができるようになった。
かよちゃんもある出来事をきっかけに、小さいかばんを持つようになる。
でもやっぱり完璧ではなく、サブバックを持っているし、小さいかばん状態は長く続かない。
なんだかそれがかよちゃんらしくて読んでいるこちらは安心する。
「不安」のために荷物を多くするのもいいけれど、一度必要最低限の物だけで外に出てみると、案外それらが杞憂に終わることがあるかもしれない。
荷物を軽くして、体も軽くしてみよう。
ちなみに『かよちゃんの荷物』は終始荷物の話をしているわけではなく、かよちゃんが再就職のために頑張ったり、太ってしまったり、個性的な面々に出会ったりする。
読むとなんだか体の力が抜けるので、疲れた心におすすめする。