声を大にして言いたい『わたしはなにも悪くない』
小林エリコ『わたしはなにも悪くない』を読んだ感想。
思えば私の人生は、苦労のフルコースのようなものだった。
その言葉どおり、著者の歩んできた道は想像を絶する険しさだ。
ブラック企業に勤め、心のバランスを崩したことにより自殺を図り、精神病院に入院。
退院後は生活保護を受け、人生に再び絶望し、再度自殺を図る。
子ども時代は学校でいじめられ、家では父親が酒で暴れ、家庭は崩壊寸前。
それでも著者は生きている。
精神病院で過ごした日々。
そこで出会った人々、そこであった出来事の数々。
当事者研究を通して、今の社会がいかに精神疾患者にやさしくないかを知り憂える。
生活保護を受けながら自堕落的な日々を過ごし、人とのつながりが途絶えてしまうことに恐怖を感じる。
フリーペーパーやミニコミ誌の発行を通して、社会とのつながりが回復していく過程。
また働くことができるようになった喜び。
そして、絶縁した父親のこと。
この章は特に読んでいて苦しくなった。
父親の機嫌をとるために過ごしていた子ども時代。
常に顔色を伺い、どこにスイッチがあるかを探る日々。
家族との関係がいかに人生に影響を与えるのか。
好きだし、愛があっても相手から与えられなければそこにあるのは「無」だ。
父親に会いたいという気持ちがあっても、会ったらまた憎んでしまう。
きっとその葛藤の繰り返しなのだろう。
著者の人生は苦しいこと、辛いことの連続だ。
今でこそ、その経験を文章にして、こうして本にすることができているが、当時のことを著者の気持ちを思うと胸が苦しくなる。
著者が前作、『この地獄を生きるのだ』で生活保護を受けていたことを公表したことで救われた人もいたという。
この地獄を生きるのだ うつ病、生活保護。死ねなかった私が「再生」するまで。
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実際、私自身生活保護についての本やマンガを読むきっかけになったのは、著者の存在があったからだ。
生活保護というとマイナスなことしか浮かばない。
しかし、それで助けられている命があるのだ。
生活保護のいい面も悪い面も、私は著者の本で知った。
小林エリコという人はこれまで苦しい人生を本人の意思に関係なく歩んできた人だ。
勝手な願望だし、上から目線の考えかもしれないが、これから彼女が歩む人生は幸せにあふれていてほしい。
そしてこれからもたくさんの苦しんでいる人たちの心の支えになってほしい。
私も声を大にして言いたい。
「わたしはなにも悪くない」
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