隣で笑っていてほしい『ちひろさん』
ちひろさんは不思議な人だ。
快活で、ひょうひょうとしていて、結構いい加減。
だけど、人の心を開くすべを持っていて、周りの人を少しずつ変えていく力を持っている。
ちひろさんは元風俗嬢だ。
ある日、突然海の近くの町の小さなお弁当屋さんで働き始めた。
お弁当屋さんには様々なお客さんが来る。
恋や仕事や家族関係に悩んでいる人。
ただ話を聞いてもらいたい人。
その人たちと関わりながら、ちひろさんの日々は過ぎていく。
育児放棄された小学生マコト、自分を偽っていた女子高生オカジ、昔なじみのバジル姐さん。
ちひろさんと出会って変わっていく人びと。
みんな優しくて、寂しくて、時々無性に孤独を感じる。
でもちひろさんの笑顔を見ると、何もかもがどうでもよくなっていく。
ちひろさんはやっぱり不思議な人だ。
何も考えていないようで、実は深く考えている。
戦う術も、生きていくうえで大切なことも知っている。
時には傷つけられることもあるけれど、ちひろさんは前を向いて笑っている。
辛いことがあった時、悲しいことがあった時、隣で笑っていてほしい。
それがちひろさんだ。
作者の「あとがき」も毎回じんと来るので、最後まで読むことをおすすめする。