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女の敵は女<<<<<<<<<女の味方は女

女の敵は女」ってたまに聞きますが、それってどうなのと疑問に思います。

確かに恋のライバル、職場での人間関係などで女性同士が敵対することってあると思いますが、それって「女」として敵に思うというよりは、「人としてどうなの?」って思うことの方が多いのではないでしょうか。

私は「女の敵は女」より、「女の味方は女」と思うことの方が多いです。

最近そう思ったのは、綿矢りさ『かわいそうだね?』に収録されている「亜美ちゃんは美人」を読んだ時です。

(以下ネタバレ注意)

かわいそうだね? (文春文庫)

かわいそうだね? (文春文庫)

 

主人公のさかきちゃんは美人だけど、隣にいる亜美ちゃんはもっと美人。

 

横顔の美しい子で、高めの鼻梁も、ゆったり微笑む唇も、彫刻すればどこかの外国のコインになりそうな精巧な仕上がり。特に顎から首までは、すがすがしく清廉、少年のように引き締まった完璧なラインを描く。そのラインは細い喉から華奢な鎖骨の浮くデコルテまで続き、胸に行き当たると、とたんにどこか懐かしい丸みをおびた、まろやかな線に生まれ変わる。 

 

さかきちゃんは亜美ちゃんをそう評する。

最初は一緒にいることに優越感を抱いていたさかきちゃんだったけど、段々と亜美ちゃんといることが苦しくなってくる。

しかしさかきちゃんが苦しくなれば苦しくなるほど、亜美ちゃんはさかきちゃんから離れなくなる。

 

大学生になり、さかきちゃんと亜美ちゃんは別々の大学に進むが、亜美ちゃんはやっぱりさかきちゃんから離れない。同じサークルに入ろうとする。

 

一番つらい場面は、二人がテニスサークルの新歓コンパに参加した時、さかきちゃんが無理矢理亜美ちゃんの引き立て役にされるところだ。さかきちゃんは亜美ちゃん目当ての男の子達に「からかいの対象」にされる。さかきちゃんは場の空気を壊さないためにそれを受け入れてしまう。亜美ちゃんがそれを助けることもないままコンパは終わり、さかきちゃんはその夜、ベッドで泣く。

 

ここまで書くと亜美ちゃんって性格に問題があるのでは、と思うのだが、そうではない。

それがわかるのは二人が社会人になってからだ。亜美ちゃんが結婚したい相手としてさかきちゃんに紹介したのは、何の仕事をしているのかわからない態度の悪い男だった。男は亜美ちゃんに恋しているとは思えない。でも亜美ちゃんは両親の反対を押し切ってまで彼と結婚したいと言う。

さかきちゃんはなぜ亜美ちゃんがそこまで彼に執心するかわからなかったけど、ようやく亜美ちゃんという人に気づく。

 

亜美ちゃんは孤独なのだ。それも誰にも理解できないほどの深い孤独。「亜美ちゃんは美人」。それだけでしか見てもらえない。いつも、誰からも、そのフィルターを通してでしか見てもらえない。

 

だから亜美ちゃんはさかきちゃんに依存する。亜美ちゃんにとってさかきちゃんだけが亜美ちゃんを亜美ちゃんとして見てくれる人なのだ。

亜美ちゃんは一見何も考えていないように見えて、きちんと人を見ている。その目はさかきちゃんよりもシビアに感じられる。

 

そこに気づいてようやくさかきちゃんは亜美ちゃんを理解する。そして、

 

「支えるから」

 

さかきちゃんと亜美ちゃんの友情はこれからが本番だ。亜美ちゃんは幸せになれるかわからない。それはさかきちゃんも同じ。でも、さかきちゃんは何があっても亜美ちゃんを支えるだろうし、亜美ちゃんもさかきちゃんを支えるだろう。なぜなら二人は長い期間を経てようやく理解し合える関係になったのだから。

 

女の敵は女」より「女の味方は女」の方がずっといい。

もし「やっぱり女の敵は女だよね」と半笑いする人がいたら、声を大にしてこう言いたい。

 

「女の最高の味方は女だからな!!」